読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

早まるな。

 山手線の外側の渋谷から恵比寿に向かう途中、山手線を超える歩道橋がある。私は、ある日、そこで山手線を見ていた。

 背広を着ていたのを記憶しているので20代の中頃だと思う。まだ、走り始めて間もない埼京線が通っていた。

 私は、ぼんやりと電車を見ていた。そこに、まだ学生と思しき男性に声を掛けられた。

「何があったのか知りませんが早まらないでください」と、その若者は言った。おそらく私が投身自殺でもすると思ったのだろう。

 背広を着た、どう見ても真っ当な社会人が、そんなことをするか? と、そのとき、思った。でも、そのときのことは今でも覚えている。